ジンバブエの今後が想像もつかない


3月に行われたジンバブエの選挙について、以前触れたことがありました。

大規模な紛争が無いということを除けば、考えうるかぎりの酷い状況と言えるんじゃないかと思います。この国はいったい、立ち直れるのか。その希望が、今回の選挙にかかっているのです。

と書いていたんですが…状況は混迷の度を深めるばかり。議会では与党 ZANU-PF が破れたものの、大統領選では現職ムガベ大統領と野党 MDC の対立候補ツァンギライの決戦投票が行なわれることになしました。MDC 側はもちろん3月の選挙の時点でツァンギライの勝利が決まっていたはずだと抗議を続けていましたが、ともかく今月末に決戦投票が行われることになっていて、野党側も選挙活動を続けていたのですが…。

 投票日が近づくにつれ野党勢力への弾圧は激しさを増し、ツァンギライ氏は5回も拘束された。ビティMDC事務局長も12日に逮捕され、反逆罪に問われている。また、首都ハラレの市長に選出されたMDC市議宅が15日夜に焼き打ちされ、妻(27)と4歳の長男が連れ去られた。長男は解放されたが、妻は2日後、農場近くで遺体となって見つかった。

 弾圧工作にかかわる治安機関の末端工作員は英民間放送局チャンネル4に実態を証言。それによると、弾圧は4月5日に始まり、各地に拷問キャンプを設置。不法に拘束した野党関係者に対し、鉄の棒で殴ったり焼けたプラスチックを押しつけたりするなどの暴行を加え、ムガベ氏への忠誠を復唱させている。各キャンプから競うように死者数が政権に報告され、1つの州だけで死者は100人以上にのぼっているという。

というわけで、野党側を思いきり弾圧しています。拷問によって与党に忠誠を誓わせるとか、すごすぎる…。しかも、退役軍人たちが若者を強制的に徴兵して、MDC支持者にたいして暴行を働かせているというのですよ。

ベレングワ地区では、ZANU-PF支持者のギャング集団(大部分は「退役軍人」たちによって徴兵された青年たち)が周回し、2008年3月29日の選挙でMDCに投票した疑いのある人びとの家を襲撃している。


で、経済も無茶苦茶に崩壊しているし(5億ドル札が発行されるほどのインフレ)、隣国の南アフリカ共和国に難民が大量に入っていたのですが…

南アフリカの外国人襲撃、1万3000人が避難 写真4枚 国際ニュース : AFPBB News

南アでは外国人への襲撃が拡大、治安が悪化しました。ジンバブエからの難民も被害にあっています。このあたりについて、Human Rights Watch のレポート。

Neighbors In Need: Zimbabweans Seeking Refuge in South Africa

あと国境なき医師団が、襲撃の対象となった外国人が「難民キャンプ」に収容されたことについて懸念を表明していました。

国境なき医師団(MSF)は6月2日、ヨハネスブルクで最近発生した外国人を標的とする暴力により避難した人びとに、収容措置が課せられたことへの懸念を表明した。避難した外国人らは3週間にわたり受け入れ難い状況で生活した後に、南アフリカ政府により、自らの権利や選択肢に関する適切な情報も得られぬまま、安全が保障されない急ごしらえの場所に収容されようとしている。


ムガベ大統領は「わたしを解任できるのは神のみ」とか発言してて、もう相当にヤバい。人道支援NGO にすら介入して活動を止めさせたりする有様。

Zimbabwe tells CARE and others to stop aid work - International Herald Tribune


暴行が続き、多数の死者が出るなど、あまりにも弾圧が激しいため、ついに対立候補のツァンギライが出馬をとりやめるという事態に。

 ツァンギライ議長は報道陣を前に「MDCに所属するわれわれとしては、投票すれば命にかかわりかねない状況で(有権者に)27日の投票を呼びかけることはできない」、「選挙プロセスの暴力的で不正なでっち上げに、われわれはこれ以上、関与しない」などと述べた。

首都ハラレにあるオランダ大使館に一時的に避難しているとか。大統領候補が他国の大使館に避難とは…。


このまま行けば、当然現職ムガベの続投となるわけですが、さすがに国際社会も放ってはおけないでしょう。特に旧宗主国のイギリスは以前からいろいろと発言しているようです(ちゃんと追ってないですが)。しかしどうやって収めるんでしょうね、これ。ムガベ側がここまで必死になっているのは、もちろん権力への固執もあるでしょうが、ここまで来るともはや「権力を手放せば、その瞬間から安全が保証されない」という所にまで来てしまっているのかもしれません。

ずばり、彼が権力の座から降りれば、彼のこれまでの数々の犯罪に対し、司法の判断が下されるばかりではなく、“大統領”という役職が無くなると、身辺のガードが低くなり、彼自身が殺される可能性も極めて高くなるからです。

彼の周りで甘い汁を吸いつづけてきた側近、家族、一族郎党も同じ運命です。これだけ長い間、権力の座にとどまる、ということは、彼の周りでこれらの恩恵に与ってきた人間の数も半端な数ではないのです。

つまり、彼が権力にしがみつく一番の理由は、彼と彼の一族の安全や命を守るため、だと言っても過言ではないでしょう。

この状況を軟着陸させるのは相当に難しいでしょうね。もしかするとこれまでの彼らの犯罪をある程度見過すというような、安定のために正義を部分的に諦めるという選択が取られる、なんてこともありうるかも…。
安保理ジンバブエ政府を非難する議長声明を出して、投票の延長を求めたようですが…。
asahi.com(朝日新聞社):安保理、ジンバブエ政府を非難 議長声明を採択 - 国際
緊迫しています。