実用書とのつきあい方

 昨日の記事で触れた投資の本もそうなんですが、ときどき実際的な知識を仕入れる必要のために実用書を読むことがありますよね。これも年齢が上がるにつれて心配事が増えたりして、それまで接してこなかった分野のことを知っておかなければならなくなったりします。お金の関係もそうだし、子育てや教育のこと、健康に関することなんかもそうですね。若い頃は書店の実用書コーナーなんか見向きもしませんでしたが、そうもいかなくなってきます。ネットではどうしても知識が断片的で偏るし、全体像がつかみづらい。なのでまだまだ本に頼ることは多いです。

 しかし残念ながら役に立たない本が少なくないというのも実感としてあります。時間とお金を無駄にしたくないので、そういういわゆる実用書を読むときに気にしているポイントがいくつかあります。 

 

最低3冊は読む

 どの分野でも、1冊の本ですべてはカバーできないものだと思います。内容が薄いことも多いし、ある本では常識のように書かれていることが他の本で否定されてるなんてことも珍しくありません。バランスの取れた見方を得るためには、面倒でも複数読んでおく必要があると思います。

 読むのに慣れている人なら、著者が論理的に議論しているかどうかはわかると思います。何冊か読んでみて、どれも話の展開がイマイチ合理的じゃないなー、と感じるようなら、その分野自体があまり成熟していないのかもしれません。すこし周辺まで広げてあたったほうがいいというサインだと思うようにしています。

 

データは大事

 生活に直接関わってくるような分野では、事例の紹介がされることが多いと思います。著者の実体験だったり、著者のクライアントや相談者だったり、知人の例だったり。Aさんはこういう行動のおかげでうまくいった、Bさんはこんな判断をしたせいで大失敗した、みたいなの。読む側としてもイメージを持ちやすいので、悪いことではないと思います。

 でも我々の脳はこういうエピソードに強く反応して印象付けられる傾向にあるので、注意が必要です。著者が「よくあることです」と書いてても、それが大半の人に起きるようなことなのか、「まれによくある」レベルなのかわかりません。

 なのでやはりデータは大事です。統計なり実験なりのデータが載っていない、グラフや表のない本は、著者が「なんとなくそう思った」ことしか書いてないわけです。こういうところは Amazon で本を探していてもなかなか見えてきません。図書館やリアル書店で立ち読みしながらでないと、「なか見検索」だけでは不足だと思います。なので僕はまだまだリアル書店に頼ることが多いです。

 

著者のポジションを割り引く

 本を書くくらいなんだから当然専門家なわけです。職業的な立場ってものがあります。誠実に仕事をしていればしているほど、自分自身や自分の業界は読者の役に立つと本気で考えていると思います。だからそこは割り引いて考える必要があります。本文中で「自分は〇〇という立場だから、ここは割り引いて考えてほしい」と書いてくれる著者もいますが、全員じゃない。著者のプロフィールは必ずチェックするようにしています。

 

「当たり前のことしか書いてない」本から読む

 いろいろ問題が指摘されている Amazon のレビューなんかでも、僕は結構参考にしています。レビューを書く人々のなかには、その分野に詳しいと自負している人も多くて、よく「当たり前のことしか書いてなくて物足りない」とか「この程度の内容ならネットで調べれば済む」とか書かれています。こういうレビューがつくのは、その本が基本的な内容を押さえていて、著者が突飛なことを言ってない証拠です。まあ場合によっては本当に内容がペラペラで「ネットで済む」というケースもあるかもしれませんが。でも初学者にとってはそういう「普通のこと」を知ることがまず大事なわけですから、一つの基準にはなると思います。

 逆に「斬新な切り口」とか「通説をくつがえす」とか書かれている本は、少なくとも従来的にはスタンダードな意見ではなかった主張がされているものだ、ということを念頭に置いて読むようにしたほうがいいと思います。標準的な内容と比較したかったら、それとは別の本を当たる必要があるということですから。

 

 

 特に好きでもない分野の本を何冊も読むのは、必要があるとはいえ結構大変ですよね。でも面倒がらずに比較検討するようにしたいと思います。うまくいい本に当たれば、案外面白く感じるなんてこともありますしね。運が良ければね。