彼もそう言ったんだろうか
捏造説は、さすがにもうおなかいっぱいです。
以下チラシの裏。
鈴木邦男さんが、
と書いていて、それはこの数日あちこちで靖国問題を語る人達の文章の中でも何度も何度も何度も見てきました。そしてこの言いまわしを見るたびに、僕は「彼もそう言って死んでいったのかなあ」と思わずにはいられませんでした。
彼っていうのは、伯父です。大戦末期に海軍に出征して亡くなっています。呉から、とは聞いていますが、父からはそれ以上詳しく聞いたことがありません。なんかね、聞けないんですよね。恐い人だった、そうです。戦後、周囲の同世代の若者が次々と帰ってくる中で、伯父の戦死の知らせが届き、祖母がとり乱して泣いていた、それを思い出して酔った父は泣いていました。僕が子供のころです。あんな泣き方をする父を見たのは、後にも先にもそれっきりです。
伯父さんとか、お祖父さんが戦死したっていう人、すごくすごくたくさんいるはずですよね。その人達は、あの台詞を言いながら死んでいったんでしょうか。僕の伯父は、靖国にいるのでしょうか。彼は「父さん」でも「母さん」でも、弟妹たちの名でもなく、「天皇陛下万歳!」と言ったんだろうか。「祖国の英霊」になることを喜んでいたんだろうか。そうかもしれない。そうでないかもしれない。
会ったこともないし、人柄もほとんどわからないですから、どんな気持ちで戦地に赴き、死んでいったのか、まるで想像もできません。でも生きのこっていれば、間違いなく僕も彼に会っていたはずなんですよね。どんな人だったんだろう。ほかの多くの親戚同様、僕には好きになれないタイプの人だったかもしれません。わかりません。
靖国神社に行ったことは、ありません。とくに考えがあるわけじゃないけど。
会ったこともない伯父と、泣いていた父の姿が、僕にとってのあの戦争のリアリティ、なんですかね。
僕らみたいに戦争を知らない世代でも、みんなそれぞれに、ちょっとずつあるんだろうなー、と。靖国靖国天皇天皇英霊英霊…といっぱい目にしたので、そんなことを考えてしまっていたのでした。