わたしのネットウヨ観

いろんな人の考察を読んだので、寄せあつめて自分なりに整理してみたくなりました。まず普通に右派、左派、というとき、その内実はいくつかの軸が絡んでいると思うんですね。たとえば、

自由 - 平等
おもに経済面で。自由な競争は平等を保証しないし、平等のためには規制が必要。
公の価値 - 個人の価値
伝統的価値と現代的価値、といってもいいかもしれない。
体制 - 反体制
そのときどきの権力を握ってるかどうかで変わる。

みたいな整理ができるかと。で、「自由-公-体制」が右、「平等-個人-反体制」が左、というふうに今の日本ではおおまかにまとめられることが多いのだと思ってます。ここで、右側は公の価値を重視しながら経済的には自由な競争による格差を肯定するという面が、左側は個人の価値を重視しながら経済的には規制によってある程度の平等を求めるという面が、それぞれあって、内的にも異なる軸の間でせめぎあいがある。さらに体制 - 反体制は政権が変わればコロっと変わる、はず。
僕なりの理解をがばっと図式すると、だいたいこんな感じ。それぞれの具体的な個人や団体は、複数の軸の間のバランスによってラベル付けされたりするけど、実際はみんなそれなりに複雑。


で、ネットウヨですが、上に挙げた3つの軸はどれも中心には来ていないんだろうと思うんですよね。よく指摘されるように、僕もまず「反マスコミ(産経以外)」があるんだろうと思います。そこが「ネット」ウヨたる所以でしょうし。それはまた同時に反日教組であり、反主流派知識人、のようにも見えるので、乱暴に括るとするなら反(知識・情報の)権威、といえるかもしれません。ここにはもちろん「マスコミ(産経以外) vs ネット」という死ぬほど単純な図式があると考えられます。ネットは自分たちの側、マスコミ(産経以外)は敵です。それゆえ「敵の敵は味方」式に「体制 - 反体制」においては体制の側を支持するのでしょう。現在反体制となるサヨクは敵で、サヨクの信奉する価値には反対することになります。そんなわけで「自由 - 平等」の軸も「どちらが自分に有利か」ではなく「敵はどっち側か」で選択してしまう。

面白いのは、普通の左派・右派がそれぞれ内包してる緊張や複雑さなどには全く目もくれず、対象をあっさりラベリングする、しかもそのとき「敵側」に寄せて解釈しがち、というところ。マスコミを批判する左翼とか、体制を批判する右翼とかは、彼らまともに理解できない。だから普通なら右派とされる人でも、今現在の体制を批判する人や、四六時中マスコミ批判(産経以外)をしていない人は、めでたく「サヨ認定」とあいなるわけで。オーマイニュースとかで見られる吃驚仰天摩訶不思議なサヨ認定は、こう解釈してます。


なぜ敵側に寄せがちなのか?ここはほとんど推測なのですが、「ネットで目覚めた感」とかを見るに、自分が漠然と受け入れていた考えとは全く対立する考えと出会ったときに「オレは今まで騙されていた」と認識してしまうところにあるんじゃないかと。もちろんその対立する考えを受け入れることで優越感や自己肯定感が得られそうであれば、それだけ「騙されてた」という思いが強くなる。「自分は無知であった」とか「より深く比較したらどうか」という思いよりも「騙されてた」という印象を強烈に持ってしまう。だからこそ「騙してきた奴ら」「嫌な奴ら」「悪い奴ら」「敵!」として、マスコミ(産経以外)日教組が認知される。騙された傷があるので、もう騙されまいとして過剰に「敵」と認識してしまう。その一方、ネットは自分たちのテリトリーだと思っているので、ネット上の言説への疑問は極端に薄い。名無しさんは「敵」じゃない。はっきり「敵」と認識できる名無しさんは工作員認定。
ただ、ここで「政府」を形成する官僚はどうも彼らの敵らしいので、そのあたりはよくわかりません。マスコミが官僚を批判してもあんまり「偏向報道!」と言わないよね。なんでだろ。あ、自衛隊防衛庁はたぶん例外。


そしてナショナリズムはその延長線上にあるだけなので、別に愛国というほどのことはない。日本の伝統なんかよく知らない。そのナショナリズムは、せいぜい嫌韓・嫌中として出てくる程度だけど、これは「自分より下」を設定したいという欲望と相乗効果をもつので、派手に噴き上がってしまう。「公の価値」にも実はあんまり興味がないので、自分が我慢しなくていい場合に限って強く主張する。社会的弱者や障害者の権利を「公の価値」のために制限することには賛成だが、自分が奉仕するつもりは別にない。


「ネットは自分たちのテリトリー」と思っているので、たいへん威勢がいい。その裏返しとして、ちょっとリアルで行動する(電凸とか)とネ申。サイバーカスケードのおかげで自分たちが(ネット上では)マジョリティであるかのような印象や、2ch のようなコミュニティへの帰属意識をもちやすい。数としては仲間がたくさんいるので、イナゴとなって集団行動も起す。



うーん、なんかもうちょっと何かありそうな気もするけど。
ともかく、いろんな人の話を寄せあつめて自分なりに焼きなおしてみました。今のところ、僕はだいたいこんな風に理解してます、ということで。ただネットウヨと呼ばれる「層」の特徴はこんな感じだと思ってますが、具体的な個々人はやはりちょっとずつ違うってのも忘れないようにしたいです。


ところで、よしりんの共闘宣言に素直に喜んじゃう人って、ちょっとかわいいとか思ったり思わなかったり。