学芸員資格の見直しは当然だと思う

資料の収集や保管、調査研究する学芸員の底上げのため、現行資格を「学芸員補」に格下げする案や、経験を積んだ「上級・専門学芸員」新設も考えられている。

「経験を積んだ「上級・専門学芸員」新設も」と言いながら「格下げ?」という見出しですか…。そうじゃなくて、今みたいに楽勝でとれる資格は「その程度のもの」(学芸員補)にして、「学芸員」はもっとちゃんと「高度」な資格にして、資格制度を意味のあるものにしようって話だと思うんですけど。


僕はこういう見直しは当然だろうと思います。学芸員資格なんて、「とりあえず取る」資格の代表格になってて、資格持ってるだけじゃ全然何の能力の証明にもなってないですから。実務経験で得られた技能を資格として認定するというのは、それなりに意味があるんじゃないでしょうか。日本だと新人もベテランも「学芸員」ですが、欧米で Curator って言うとある程度の地位人、学芸課長クラスなんだそうですね。欧米に合わせろとは言いませんが、ヒラもベテランも同じ資格、しかもその資格には実務の上ではほとんど何の意味もない、という状態を改善する必要はあると思います。大学でちょっと授業を多めにとれば得られる資格なんて、ね。
ただ、そうして資格制度を新しく作ることが、また別の利権だとか何だとかにしか繋がらないようだと困りますが。

それから「専門学芸員」というのも必要なことだと思います。よく「学芸員は雑芸員」などと言われますが、専門家よりも「何でもできる人」が重宝される傾向があるのは確かです。保存修復や博物館教育や、地域コミュニティとの連携や、学術的に有効な記録管理、そういう分野でより高度なことをできる博物館にしていこうとするなら、もっと専門家が必要でしょう。


もちろん、そういう形で学芸員資格を見直していくということは、「長期的に技能を習得し、専門性を高めることができる環境」や「必要なだけの分野それぞれの職員を雇う人件費」が必要なわけで、資格制度だけいじっても底上げにならないことは確かでしょう。文科省がやらなければいけないのは、本来はそういうところだと思います。この提案を出してる委員会のメンバーは役人じゃなくて、博物館の現場を良く知ってる人達のようですから、本心では「とにかくもっと予算を」と思ってるんじゃないかという気がしますけどね。ま、わかりませんが。


ま、国民が「聖域なき(=横並びの)構造改革」を選んでしまったので、博物館には予算を潤沢に、ってのは当面無理でしょうけど。でもね、例えば外国に留学して博士課程で勉強して現場でインターンなんかもやってきて、そういう人が非常勤のバイト仕事してたりするのが今の日本の博物館・美術館なわけですよね。やっぱどうにかしてほしいよなぁ。「わが国の伝統と文化」にも関わることなんだし。