ケニアのその後の経過


政治的な解決は確かに模索されていますが、しかし混乱はまだ続いているようです。

【緊急募金アピール】ケニアでの援助活動にご協力をお願い致します!【UNHCR】 国際ニュース : AFPBB News


初期の経過をおさらいしておくと、昨年末に行なわれた大統領選で、現職のムワイ・キバキが対立候補のライラ・オディンガに勝利したと選挙管理委員会より伝えられました。しかしこの選挙には不正の疑いが濃厚で(有権者の数より投票が多いという集計が出た地域があったり、かなり無茶だったらしい)、対立候補とオディンガの率いるオレンジ民主運動を支持する人々が大規模なデモ、この対立が暴動に発展していきました。


背景には、現政権下における民族間の不平等に対する不満の蓄積があります。そのため、キバキ大統領と同じ民族であるキクユに対する攻撃がまず大きくなり、これに対抗してオディンガと同じ民族であるルオの人々も攻撃されていきました。
きっかけは選挙の不正でしたが、このような背景のもとに、地域の有力者・長老や政治家、ラジオなどが民族間の対立を煽ったようです。また、選挙の前からすでに双方とも武装の準備をしていたという情報もあります。自然発生的な部分と、組織的に計画された部分と、いずれの性格もこの暴動にはあるようなのです。
参考:BBC NEWS | Africa | Kenyan ethnic attacks 'planned'


一時は沈静化していくかに見えましたし、1月に入って前国連事務総長コフィ・アナンがキバキ、オディンガ双方に働きかけはじまめましたが、暴力の応酬はなかなかおさまらず、激しさを増します。そして、1月29日にはオレンジ民主運動(ODM)の議員が殺害され、さらに1月31日にはやはり ODM の別の議員が殺害されます。後者については、現地の警察は男女関係が原因と説明していましたが、ODM 側はこれを暗殺であると非難。このとき予定されていた双方の指導者どうしの話し合いも延期されました。
しかしともかく今もアナンの仲立ちを軸に交渉は進められており、解決策の模索が続けられています。現在、米国のライス国務長官がナイロビに入っています。
参考:BBC NEWS | Africa | Rice in Nairobi to push for deal


今のところ、何らかの形の共同の政権を作ること、昨年末の選挙に関する独立の調査委員会を設立することが合意されています。また、暴動の期間中、民族対立を煽るヘイトスピーチを流したラジオ局や政治家を調査するという発表もありました。ケニアではそれぞれの地域にラジオ局があり、比較的普及していて、ラジオを通じて暴力が煽られた面が小さくないようです。
参考:BBC NEWS | Africa | Kenya to probe radio hate speech


これまでに少なくとも1,000人が殺害され、約60万人が住処を追われています*1。また、難民になってしまったことで医療や薬剤へのアクセスが難しくなった AIDS 患者も多く、少なくとも難民のうち 1万5千人は HIV 陽性と言われています。事態の推移によっては、直接的な暴力による死者よりも AIDS による死者の方が多くなるかもしれない、と懸念されています。
参考:BBC NEWS | Africa | Aids patients hit by Kenya crisis


フォローできてないこともいろいろありますが、ともかく自分にわかる範囲で。

*1:BBC の記事に出ている数字。UNHCR によれば国内避難民は約30万人とされています。http://www.unhcr.org/news/NEWS/47a886fc2.html