ガッカリした新書


食べ物の話が大好きなんですよ。

こないだ北欧料理のレストランで、トナカイ肉の赤ワイン煮込みを食べました。北海道産のトナカイだそうでしたが、非常にうまかったです。ステーキのチョコレートソースがけどっちにするか迷ったので、今度機会があったらステーキを食べてみようっと。そんで、その煮込みに添えてあったのが「インカのめざめ」という品種のジャガイモで、素晴らしく甘く、舌触りの滑らかな美味しいジャガイモでした。話題になってるんだそうですね。うなずけます。


ジャガイモに感動した勢いで、こんな新書を買いました。

ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)

ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)

目次を見た感じでは、まず北海道の入植者たちの話が導入になってます。それから原産地であるペルーとスペイン人の侵略、旧大陸へ、アイルランドのジャガイモ飢饉の話、絶対王政とジャガイモ、産業革命とジャガイモ、そして現代と日本…という具合に展開する内容のようです。これは面白そう。期待大です。もうおなかが鳴りそうです。


ところが…読み進むうちにガッカリしてきてしまったんですよー。つまらない。最初は期待で読みすすめてたんですが、そのうち自分が全然楽しめてないことに気づきました。どこがダメなのか?

1. 余計な話が多い

専門書じゃありませんから、軽い文章から入るのはいいんです。紀行文みたいのがあるのもかまわない。歴史的背景にも多少は触れる必要があるでしょう。でもそこが長すぎるんです。例えば、19世紀のアイルランドで起きた大飢饉の話に続けて、この飢饉でアメリカに渡った移民が多くいたことに触れるまではいいんです。だけど、そこから移民つながりだけでケネディ大統領の生い立ちから暗殺までに4ページも割くのはちょっとどうかと思う。ジャガイモまるで関係ねぇ…俺はジャガイモのことを知りたくてこの本買ったんだよ!ケネディの話は他所でやってくんねえかな?
いやもうとにかく、こういう余談がいちいち入ってきて、大事なジャガイモ話(ジャガバナ)の腰を折るんですわ。イライラしちゃいますよ。

2. 話の順序

ヨーロッパにわたったジャガイモは、地域によって普及の度合いにかなり差が出るのですが、その原因の一つが迷信です。で、ヨーロッパでの普及に苦労した話の中で「迷信もあって…」みたいに書かれてるんですが、読者としては当然「どんな迷信?」と思うでしょ?だけど、その疑問に答えられるのはその章の一番最後にくっついてるオマケみたいなコラムなんですよ。こういうのがすごく気持ち悪い。モヤモヤと疑問を抱いたまま読み進めても、なんだか頭に入ってきません。

3. 個々のネタがバラバラ

全体としては一応、歴史的な順序を追っていて、クロノロジーというかまあ、ジャガイモ・クロニクルになってるんです。が、それが「流れ」として見えてこない。一つ一つのエピソードや事件、史実や人物は興味をひくものもあるんですが、大きな流れてというものが掴みづらいんです。もちろん、歴史的事実がストーリーの作りかたによってあまり歪められてしまうのも困るのですが、しかしジャガイモの歴史全体を著者がどのように捉えているのかがわからない。言うならば、ジャガイモを通してどんな歴史像が見えてくるのか、そこが見えてこないんです。



とまあ、こんな具合に面白くないんです、この本。面白かったら読み終わってから紹介しようと思ってたんですが、面白くなかったので途中で読むのをやめにしました。でも紹介だけはしておきます(笑)。まあ、それなりに面白いところもあるんですが、もうちょっと上手にさえ書いてくれてたらなぁ、と思うと残念です。がっかり。新書って軽く読めるので、専門外のいろんな分野の話を読みたいときには手頃なんですが、読んで期待を裏切られることも少なくないんですよねぇ…。ま、次の本を読みはじめることにします。