人権状況の改善を求める中国の市民


チベット問題が注目されるのはいいのだけれど、どうもレイシズム丸出しの人とかいて*1、中国の政府当局と市民くらいは区別しましょうよ、と思う。今回のチベットでの騒乱以前から、中国人の人権活動家に対する不当な扱いも横行していることはよく覚えておいてほしいです。

中国北東部黒竜江(Heilongjiang)省佳木斯(Jiamusi)市の裁判所は24日、北京五輪と結びつけて人権状況の改善を求める署名集めを行った元工場労働者の男性に、政権転覆扇動罪で禁固5年の判決を言い渡した。男性の家族が明らかにした。

同市内の裁判所で判決が言い渡されたのは、楊春林(Yang Chunlin)さん(52)で、「五輪よりも人権を」と訴える署名1万人分以上を集めたことで罪に問われていた。

この楊春林(Yang Chunlin)さんは、アムネスティによれば、拷問を受けたと言われています。

拷問は、鉄のベッドの四隅に手足を伸ばして鎖でつなぐというもので、この拷問を受けた者は、全身に激しい痛みを感じ、飲食・排便もその体勢でしなければなりません。楊さんは、この拷問を8月の始めに6日間、9月に1日間受け、また他の囚人がこの拷問を受けるのを見せつけられて、彼らの排泄物を片付けさせられたものと思われます。

彼は、2007年のはじめから「オリンピックではなく、人権がほしい」というスローガンを使ってキャンペーンを始めたと言われています。


チベット問題に関しては、中国国内の著名人からも批判が出ていますね。

中国の著名な作家、王力雄氏や劉暁波氏ら約30人が22日、チベット騒乱について「平和と非暴力の原則に基づいて民族の争いを解決し、中国政府は暴力的な鎮圧を即停止すべきだ」とする声明を発表した。中国当局の抗議運動への厳しい取り締まりについて、国際世論だけではなく、中国国内からも批判が出た形だ。

こうした声が、当局の圧力を乗り越えて、市民に広がっていくといいですね。


また、中国の人権問題としては例えばほかにも「労働教養」という「起訴や裁判、司法による再審査なしで最長4年まで拘禁可能な制度」があります。

何十万もの人びとが、「労働教養」の施設で厳しい状況下に置かれていると思われる。「労働教養」は、中国の法律で罰せられるほど深刻ではない違反を犯したと警察が判断した人びとに対して使われている。軽犯罪、政府批判、禁止されている宗教の信者もこの対象である。

「労働教養」の改正案は2年以上も立法府の議題に上がったままである。アムネスティ・インターナショナルは、長年にわたり「労働教養」に関して懸念を表してきたが、人民代表大会常務委員会に対し、オリンピックまでに、「労働教養」に替わるものとして、公正な裁判を受ける権利などを含む、国際人権基準に十分適合する何らかの法律が採択されることを保証するよう求める。

このような制度がある限り、真に市民が自由な議論を積み重ねていくことは不可能です。しかし、こうした状況下でさえ、活動し発言する人々がいることもまた確かです。最低限の市民的自由さえ保証されれば、一気に政治的な環境が変わっていく可能性は充分あると思います。


チベットが独立を目指すべきかどうか、というような政治的に様々な立場がありうる問題よりもずっと基本的な問題として、まず市民の自由の保証が必要です。「公正な裁判を受ける権利」「警察による恣意的な拘禁の停止」「良心の囚人の釈放」「言論・集会の自由」といった、リベラルな社会では誰もが合意しうると思われることが、中国ではまだまだ実現されていません。中国政府がダライ・ラマを「独立を求める陰謀」を主導したと非難しているのは、独立云々に焦点を当てることで、こうしたより根本的な問題に対する中国の市民の注意を逸らす効果もあるように思えます。僕達のような外国人の眼についても同様です。


そして悲しいかな、私たちの国の大臣はこの程度の言い方しかできないのです。

中国チベット自治区で発生した大規模暴動の対応に額賀財務相は「国際的に理解が得られるように中国の努力を期待する」と要請。

人権に関して問題の多い国や地域は中国だけではありません。残念ながら、日本もアムネスティを始めとする各種団体から様々な問題を指摘されています。チベット騒乱で人権問題に関心を持たれた方々が、頭の悪いレイシズムなどに絡めとられることなく、私たち自身の問題として関心を持ってくれればと願っています。