安田弁護士の「強制執行妨害」の件


asahi.com:安田弁護士に逆転有罪の判決 強制執行妨害 - 社会
記事ではちょっと詳しい判断の内容がよくわからないので論評は避けますが、正直いってかなり驚きました。


この事件については、こちらの本で詳しく知りました。

特捜検察の闇 (文春文庫)

特捜検察の闇 (文春文庫)

文庫版の元の単行本は、2001年の発行です。事件や一審の経緯を解きほぐしながら追っていて、ややこしい背景もよく理解できる記述になっていると思います。


後半から一部を引用しておきます。

安田弁護士事件の判決は2002年には言い渡される見通しだ。これだけ彼の無実を証明する事実が明らかになっても、裁判所が安田に有罪を言い渡すとしたら、日本の司法は司法の名に値しない。私は過去に何百件かの事件を取材したが、これほど検察側立証が総崩れになる事件を見たことがない。
警視庁と東京地検はなぜこんな無茶な捜査をしてしまったのだろうか。一言でいえば、これが国策捜査だからである。目的は安田という「反社会的な存在」を抹殺することだ。捜査に多少の欠陥があっても許される、そんな甘えが捜査陣全体にあったと考えざるをえない。
それに、彼らには中坊公平が掲げた「正義」の御旗がある。刃向かう者は「悪」だという危険な思い込みが杜撰極まりない捜査を生んだのではないだろうか。(pp.241-242)

今ここで詳しく論じる余裕はないが、安田らは検察側の「麻原の絶対的な支配権の下、その命令一下、凶悪犯罪が次々と行われた」というオウム事件の基本構図が事実に反し、実態はかなりばらばらだったことを反対尋問で明らかにした。そして警察が地下鉄サリン事件の発生を事前に察知していた疑いがあることを指摘し、オウム捜査の裏に隠された秘密を暴こうとしていた。
その安田が逮捕され、長期勾留されている間、地検幹部の一人は「あいつがいなくなったら麻原公判が順調に進みだした」と喜んでいたという。(pp.242-243)


地下鉄サリン事件云々の部分についてはよくわからないところではありますが、それを措くとしてもかなり問題のある捜査だったことは間違いないでしょう。これがなぜ逆転有罪になったのか、気になるところです。