在外中国人に期待したいこと


韓国での聖火リレーでも、投石などの危険な行動があったようで大変残念です。
韓国の聖火リレー、親中国派が数で圧倒 現場は騒然 写真18枚 国際ニュース : AFPBB News

正直に言って、国外にいる中国人の人々が聖火リレーの妨害に「対抗」して起こした行動に、とても失望しています。母国が世界中から非難されているとなれば、アピールしたくなるのは理解できます。しかし一部とはいえ暴力的な行動に及ぶ人のいたことは、よく反省すべきだと思います。もちろん妨害をする人々の中にも、物を投げたり、たとえばフランスでは車椅子のランナーを襲撃するなどという許しがたい行為がありました。しかし、だからといって報復が許されるわけではありませんし、加熱しすぎている中国人の愛国心に疑問を呈する同じ中国人への一方的な攻撃などを正当化できるわけではないでしょう。


チベット問題に関して、中国の人々から見て欧米での報道が誇張されているとか、人種差別的な偏見があるとか、そういった受け止めかたをされることもあるようです。偏見に基づく発言があることは確かで、それはそれとして批判されなければなりません。しかし先月のラサでの暴動については、本当に誇張されているのでしょうか。中国政府とチベット亡命政府で主張が違うのは、いずれも当事者ですからありえる話ですが、概ね中国政府の言い分は信用されていません。
その理由は、国外から距離をとって中国を見ている留学生や在外中国人の人々には、本当はよくわかっているはずです。自由がないからです。自由のない国の政府の発言は、特にそれが人権にかかわる問題であるとき、信用することはできません。


こう言うと「いや、自分は自由だ」と思っている中国人は反発するでしょう。しかし残念ながら、中国に充分な市民的自由があるとはとうてい言えません。

北京オリンピック・キャンペーン_中国の人権、何が問題なの? | AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN

言論や表現の自由、集会の自由が保証されているとは言えません。カルフール不買運動のように政府に都合の良い活動やデモは容認される一方で、ただ署名を集めただけの人が投獄されている。

北京オリンピック・キャンペーン_良心の囚人たち | AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN

こうした問題も「反中勢力による陰謀」でしょうか。そうではなく、中国政府が現に行なっていることでしょう。


チベット問題は、どのような解決が望ましいかは亡命政府や難民を含めたチベット人自身と、中国の民衆との間の対話によって時間をかけて見いだしていくべき問題だと思っています。ただ、政府の暴力が市民に及ぶとき、それは単なる国内問題とは見なされない、ということについては中国の人々もよく理解する必要があります。
また、ダライ・ラマと中国政府の対話は実現すれば大きな前進ではありますが、本来必要なのはそれだけではなくて、中国全土にわたる自由の確保であるはずです。自由が確保されてこそ、民衆レベルでの本当の対話が可能となるのですし、また対話と信頼の構築こそが本当の解決につながるはずです。


欧米や日本や韓国でデモに参加した中国の人々には、よく考えてほしいのです。あなたたちが参加したデモは弾圧されたでしょうか?暴力に訴えず平和的に行動しただけの人が逮捕・拘禁されて拷問を受けたりしたでしょうか?中国で起きていることとは、あなたたちのように平和的に政治的主張をしているだけの人が、投獄され拷問を受けているという事態です。天安門事件を思い出して欲しいと思います。
現在中国に向けられている非難の背後に、急成長する中国経済に対する警戒感であるとか、人種差別的な偏見がまったく無いとは言えないでしょう。しかしそれを差し引いても、非難されるだけの理由はあるのです。政治的な主張をする自由がどれだけ必要なものなのか、デモに参加した在外中国人は学ばなければなりません。そしてその自由を、一刻も早く母国に実現してほしいと思います。