グリーンピースのメンバーの勾留について、アムネスティが憂慮


調査捕鯨のプロセスで、鯨肉の大規模な横領が行なわれているというグリーンピース・ジャパンによる告発について以前にも触れました。鯨肉の「証拠品を確保」した2人の活動家は、6/20に逮捕され、13日間の勾留ののち10日間の勾留延長、そして7/11に起訴されました。彼らは検察に全面的に協力しており、供述書も提出しているし証拠についてももちろん提出しています。逃亡や証拠隠滅の恐れはなく、したがって逮捕・勾留する必要があるとは思えません。


逮捕時にこんな指摘をされた方がおられますが…

仮に警察が,グリーンピース側が犯罪の成立を否認しているからとの理由で逮捕したのであるとすれば,自白獲得のために被疑者自身をいわば人質とした人質司法の現れではないかと言わざるをえません。

グリーンピースは国際的な団体であり,今回の告発も国際的な関心を呼んでいるものと考えられます。今回の逮捕,そしてその後のメンバー2名に対する処遇が国際的に注目されることは確かでしょう。


まさに国際的な人権団体であるアムネスティが、こうした扱いに「憂慮」を表明しました。

アムネスティ・インターナショナルは、日本国首相に対し、窃盗と建造物侵入の罪で起訴されたグリーンピースの活動家、佐藤潤一さんと鈴木徹さんの勾留について、深い憂慮の念を伝えた。


世の中には逮捕や勾留をあたかも「刑罰の一種」であるかのように思ってる頓珍漢な人もいるようですが(「悪いことしたんだから逮捕は当たりまえ」とか言う人ね)、もちろんそれは間違っています。アムネスティが「彼らの勾留、起訴事由、グリーンピース事務所やその5人の職員の自宅への家宅捜索などは、活動家ならびにNGOに対する妨害を意図するものであるとして懸念している」と言うように、このような勾留はグリーンピースに対する圧力として政治的に利用されていると見られても仕方ないでしょう。たとえ「証拠の確保」が違法な行為と解されるとしても、です。


グリーンピースのプレスリリースや告発レポートに加えて、告発後の一連の報道を見るかぎり、僕は鯨肉の横領が事実である疑いはかなり強いと思っています。かつまた、捕鯨が重要と考える人々であれば、こうした疑惑を徹底的に調査し、不正があればキッチリただすということが必要と考えるだろうと思っていました。ですから検察がまともに捜査のメスを入れることを多少は期待していたのですが…。

残念ながら、検察は水産庁の「お土産」というほとんど子どもの言い訳みたいな説明で納得し、逆に告発した人物を起訴することにしたようです。まことに内向きの論理の典型と言わざるを得ません。

――しかし、問題のクジラ肉について、水産庁などは『横領』ではなく『お土産』だと主張していますが?

水産庁の説明は、二転三転と変わっています。我々の告発レポートにも書いていますが、当初、日新丸の船員がお土産として、クジラ肉を自宅に配送していたことを明確に否定していました。ところが、『2キロはお土産にしている』とか『10キロまではOK』などと言うことが変わってきた。しかも今回、証拠品として佐藤らが確保したのは、畝須(うねす)という高い値で売れる部分であり、水産庁が説明する慣例でのお土産で持ち帰る肉とは別の部位です。我々に情報を寄せた内部告発者も、『多分、お土産だと切り抜けようとするだろうが、横領されている肉は全く別物』と話していました。

――全体の何キロくらいのクジラ肉が船員によって持ち出されているのですか?

今回、佐藤達が確保したクジラ肉は23.5キロの畝須。確認できた伝票は合計33枚、運ばれた荷物は最低93箱に及びます。内部告発者によれば、一人当たり少なくとも数十キロ、多い時は200〜300キロもの畝須が横領されていたとのこと。総額では数千万円単位の横領ということになりますね。


検察ならずとも「お土産」で納得してる人は少なからずいるようですが、最初水産庁は「お土産は存在しない」と言ってたんですよ?厳しく管理されるべき鯨肉がこんな大量に渡ってるのに、それを「たまたま慣習を知らなかった」なんて通用しないよねぇ。検察が不起訴にしてしまったので実態がどうだったのかは結局はっきりしないわけですが、いずれにしろあんなコロコロ変わった説明をそのまま鵜呑みにするというのは、まったく「オメー、頭脳が間抜けか?」と言いたくなります。

――それでは、なぜ日新丸側の行為は「横領」とされず、不起訴になったのですか?

わかりません。ただ当初、東京地検の担当者はこの問題の追及に非常に熱心で、何度も私達とコンタクトを取ってきました。ところが、マスコミで急に『不起訴だ』ということが言われ始めた。警視庁担当の現場の記者達も把握していなかったのに、です。弁護士を通じて確認したのですが、その時の返答は『調査中』。ですから、誤報かなと思っていたのですが、やはり不起訴となった。非常に奇妙な流れです。何らかの政治的圧力があったのかもしれません。

ま、「政治的圧力」というのも憶測の域を出るものではありませんが、「お土産」よりはありそうな話という気がしますけどね。


ところで僕自身は捕鯨についてあまり詳しいわけではないですが、「鯨は特別な動物だから捕鯨はけしからん」というような意見には全く賛成しません。機会があれば鯨を食べるのも一興だと思っています。がしかし、例えば Dr-Seton さんの「自滅する捕鯨」シリーズやそのほか日本の調査捕鯨に対する批判的な意見*1を読む限りでは、我々の国が「調査捕鯨」として行なっている行為は、「水産資源の国際的な管理」というかなりドライな観点から見た場合でも、少なくとも相当程度に不誠実、ハッキリ言えばかなりデタラメなのではないか、という印象を持たざるを得ません。

グリーンピース・ジャパンによる告発はある意味では軌道修正のチャンスだったかもしれないのに、内向きにしか考えられない人々のせいで台無しになってしまったのではないかと思います。