穏健な宗教
ちょっと前の話題ですが、ニセ科学がらみで「穏健な宗教と科学は共存できる」というような言い方がされてました。でその、「科学と共存できる穏健な宗教」ってどんなんだろう、というのがどうもよくわからない。「穏健」というのが、単に狂信的でないとか暴力的でないとか反社会的でない、というのであれば、まあ日本にある大抵の宗教は穏健ということになるんでしょうが、「科学と共存」というのがどうも。科学者の人とか信者の人とかは結構はっきりした考えがあったりするんでしょうかね。よくわからないので、科学も宗教もろくに知らないなりに考えてみました。
まず、自分にとっての宗教っていうと、法事には一応出席する、仏壇の前や墓参りの時はなんとなく心のなかで死者に語りかける、各種お祭りはわりと好き、神社仏閣に行けばお参りする、くらいのものでしょうか。僕は基本的に科学を信用していて、神とか霊魂とかはある種のファンタジーだと思ってます。
しかし信者の人というのは、神や霊魂の実在を信じているのですよね（ここがもう違うのかな？）。宗教によって違いはあるでしょうけど、だいたいは
- 人格的な神：人々をいつも見守って（監視して）いて、罪を許したり裁いたりする
- 霊魂：肉体の死後も残存して、成仏したり天国に行ったりさまよったりする
の両方または一方の実在が前提となっていて、これを根拠に「よく生きる」ことを説いているんですよね？神サマが見てるから、あるいは、あの世や来世で報われるから、そのためによく生きるべし、と。
さて、素人考えからすると、宗教と科学に折合いをつけるには、おおざっぱに2つの方向があって、
- 宗教はファンタジーであって、またそれに基づく儀礼や思想の集りであると考える。神や霊魂なんて全然まるっきり実在しないんだけど、そういう「お話」だから別にかまわない。
- 神や霊魂は実在するけど、科学とは関係ない。宗教は科学によって事実だとかお伽話だとか言われるような筋合いのものではない。
というような感じなんじゃないかと。僕にとっての宗教はもちろん 1 のほうです。だから、神さまから生き方を学ぶのもベジータから生き方を学ぶのも、基本的には違わないんだろうと。違うといえば歴史があったり、実社会で大々的に色々な祭礼が行なわれたり、いろんな人が積み重ねてきた思想の遺産が使えたり、ということはあるけど、「なぜ良く生きなければならないか」の「なぜ」の部分（神が見てるから、来世があるから）は、虚構に基くものなのであまり使いものにならない、と。良い子にしてるとサンタさんがプレゼントをくれるよ、ってのと僕にとっては同じです。
だから 1 の立場はよくわかるんだけど、その程度で「信者」って言えるのかどうかがよくわかりません。自分は特定の宗教の信者ではないつもり。でも信者なのに神や霊魂を全然信じてない人って…。教会とかなんとかにコミュニティの一員として参加してる、とかいう感じなのかな。神サマなんか信じてないけど、お祭でお御輿はかつぐよ、みたいな。つまり宗教に関係する社会活動に熱心という意味で信者だけど、神や霊魂は信じてない、みたいな感じ？どうなんだろう。
さらに 2 番目のほうはもっとよくわからない。というかまず、なんだかごまかしのように見える。水は言葉を理解したりしない、ということは「ほぼ断言していい」のに、神や霊魂は実在しない、ということは「ほぼ断言」できないんでしょうか。してもよさそうなもんだけどなぁ。この間にそんな大きな違いがあるんでしょうかね？うーむ。
いや別に、科学者は反宗教キャンペーンをするべきだ、とか言いたいわけじゃないです。してもおかしくないとは思いますけど。だって、神が見てるとか来世がとか天国がとか、そういうのを「根拠」にして（かつ、それが作り話であることを理解させずに）道徳を説くなら、やっぱり「事実でないことに基づいて道徳を教えていいのか？」ってことになるでしょうから。ただまあ、日本の学校では宗教で道徳を教えることはあまり無さそうですが。
なんというか、科学を信用していながら神や霊魂の実在をナンセンスと思わない、って一体どういう状態なのかうまく想像できないんですよね。今この瞬間にもなんだかよくわからないスーパーな存在が僕のことを見てて、許してやろうとか懲らしめてやろうとか思ってるんでしょ？へんなのー。肉体の死後に霊魂が残るってのも「空気が消えても風は残る」みたいな主張と違うのでしょうかね。想像することはできるけど、本気で言われたらやはりナンセンスとしか思えんです。
「いやいや、それはあなたの心の中にいるんですよ」という人もありましょうが、それだったら僕の「心の中のベジータ」と違わないんじゃないのかなぁっていう*1。それともやっぱ違うのでしょうか？
まあもちろん、信教の自由は保証されたほうがいいと思うので、みんな好きなものを信じればいいとは思うんですけどね。よくわからないなぁ、と。科学と折合いをつけるって、そんな簡単なこととも思えないのです。あるいは、単にみんなあんまり考えないようにしてるだけなのかしらん。
