人権という文化

こないだ買ったジョン・ロールズ他『人権について』(みすず書房、1998、asin:4622036673)、リオタールの論文だけは何を言ってるのか全然わからないので3ページくらいで断念しましたが、だいたい読んだところです。で、

なぜ人間には人権があるのにくじらにはくじら権がないのですか。 - Yahoo!知恵袋

がちょっと注目されてたりして、自分的にはちょっとタイムリーだったり。


所収論文の中で一番僕が興味をひかれたのはリチャード・ローティのもので、そこでは人権を基礎づけようとする試みを批判してます。以下僕なりの理解。
まずローティは人間には理性があるから、とか、何か人間に普遍的な本質があるから、人はすべて尊重されるべきだ、という議論はあんまりうまくないというのです。彼がプラグマティストだからなんでしょうけど、実際に差別をしてる人は、差別の対象を「同じ人間」と見ていないのだ、だから「人間の」普遍的本質から人権を導いても役にたたない、というわけです。西欧近代由来の「人権文化」をより拡げていくためには、そうした「基礎づけ」よりも、感情教育―「さまざまな種類の人間にお互いを知り会うチャンスを与え」るような活動に注力することのほうが必要だといいます。

文化の違いを越えた普遍的な「道徳的義務感」といった考え(カントとかの。よく知らないけど)は時代遅れの企てだとして、ローティは言います。

この比類のない道徳的義務感という考えを克服するには、「人間を他の動物と区別しているものは何か」という問いに対して、「人間は知ることができるが、他の動物は感じることができるだけだ」と答えるのをやめればよいのです。そのかわりにこういいかえることができます。「人間は他の動物よりもはるかによく感情を理解しあうことができる。」


そして、道徳的にずいぶんマシになってきた過去200年間について

この二百年間は、合理性や道徳性の本質についての理解が深まった時代としてではなく、驚異的な速度で感情面での進歩がみられ、私たちが悲しい、感情を揺さぶる物語に感動してそれを行動に移すことがはるかに容易になった時代として理解できるのです。

と述べています。


なんかこの文章が興味深かったので、この人の他の本も何か読んでみようかなーという気になってきました。