橋下弁護士が「世間に説明」してやればいいのに


提訴された橋下弁護士ですけど、理屈や建前からすれば彼のほうが追い詰められてるのは明かなんじゃないかと思います。彼が支持されるとすれば、何かを代弁してくれている、という気持をもつ人々によってでしょう。

ところで、大阪での集会に行ったあとでは、もはや弁護の内容については批判するつもりはないようです。集会に出席するまでよく知らなかったのでは…と思いますが、弁護団の言い分の中身そのものについては、もうよく理解されているということなんでしょう。すると責めるところが「説明責任」しかなくなって、引っ込みがつかなくなってるようにも見えます。


だけど、橋下弁護士の「もし世間に刑事弁護人に対する偏見や誤解があるのであれば、真摯にその偏見や誤解を解く努力をすべきです」ということには、やはり一理あるようにも思います。世間に配慮した弁護活動をせよ、ということではなくて、マスコミを非難するよりも、利用することを考えたほうが前向きなんじゃないかな、という意味で。
それに、橋下弁護士自身だって、刑事弁護に対する誤解や偏見は問題だとお考えのようですから、弁護士の一人としてご自身にもその問題に取り組む責任はあるはずだと思うのです。


光市事件について言えば、弁護団に怒ってる人達を見た感じでは、多くが圧倒的に誤認と憶測にとらわれています。まずは、ともかく事実や弁護団の主張の正確なポイントが彼らに届くようにしなければならないと思います。弁護人は被告の権利を、という原則よりも、個々の事実のほうが説得力があるんじゃないでしょうか*1。少なくとも僕は、原則よりなにより詳細を知ったことで弁護団擁護に傾きました。「えっ、そうだったの?」という感覚は、人の立場を変えるだけの力があると思います。それにはマスコミの空気に抗しつつ、マスコミの土俵でやる必要があるでしょう。橋下弁護士こそ、その任に最適なんじゃなかろうか。


そう考えると、彼を提訴した弁護団の一部も、少し姿勢を変えてはどうかと思うのです。煽った張本人を放っておくわけにはいかないということでしょうから、提訴に至ったことはいいとしても、対立を深めて非難合戦を続けるよりも、「刑事弁護への誤解と偏見を解く」という、彼自身にとっても正当な大義のために動いてもらえるようにしたほうがいいんじゃなかろうか。つまり、利用したらいい。
だからもう徹底的に追い詰めるよりも、彼が引っ込みをつけられるようにしたほうがいいように思います。例えば「1・2審の弁護人は間違っていた」という考えを今までよりももっと強調してやるとか。戦略の変化じゃなくてガチ、というのを見せればいい。これは弁護団側の考えを曲げることでは全然ないのだし。そしたら橋下弁護士も「奴らもようやく世間に説明する気になった、まあ煽ったのはやりすぎだったかも、でも国民的議論が必要」とかなんとか言いながら頭を下げることもできるんじゃないか。それで提訴は終いにしてはどうか。


橋下弁護士は自分が決して弁護内容を責めているわけじゃないことをもっと説明しなくちゃいけない。懲戒事由について、少なくとも「誤解させた」くらいまでは認めるべき。その上で、テレビで「弁護士は世間知らず」とかなんとか悪態をつくくらいは構わんから、個々の事件についてはちゃんと専門家として発言してほしい。世間の空気に乗るんじゃなくて、それに抵抗して、普通の人には理解しづらいところを説明してやればいい。批判すべきところは、説明した上で批判すればいい。ただ単に憎悪を垂れ流すテレビ文化人とは一線を画すくらいの気愾がほしいと思います。そうすれば同業者からも評価されるんじゃないでしょうか。


…無理ですかね。そんなに甘くはないか。期待しすぎですかね。でも、非難合戦を続けるのって不毛すぎるよなーとは思います。誰のためにもならないような。

*1:だから「そんなことはどうでもいい」という橋下弁護士は間違ってると思う