ビルマ情勢と天然ガス


なんか頭に血がのぼったまま書いてますが。


今回のビルマの弾圧は、民主化勢力と軍政の対立ではあるんだけど、引き金になったのはやっぱり石油や天然ガスなどのエネルギー資源なわけです。確かに僧侶の参加がデモ拡大を引き起したようですが、そもそもは今年8月14日の夜に、軍事政権が突然何の予告もなく燃料価格を大幅に引き上げたことに始まります。徐々に上がったんじゃなく、ある日突然、です。ガソリンやディーゼルは約2倍、圧縮天然ガスは約5倍に、一晩のうちに値上げされたのです。Mizzima News の記事によれば、15日の朝に値上げを知らずに燃料を買うために並んだ市民が、持ち合せがないために手ぶらで帰らなければならないほど突然のことでした。


その直後の8月20日に書かれた、同じく Mizzima News のこちらの記事
Fuel price hike in Burma : Junta's well-planned strategy?
を読んでも、なんでこんな値上げをしなければならなかったのか、そのあたりがよくわかりません。記事中の匿名の人物は、この値上げは軍事政権の「ワナ」だ、騙されてはならないと警告していますが…。うーむ。政権内の変化―世代交代―のためには混乱や騒ぎが必要で、この値上げはそうした事態を誘うためのものだ、という見方が出されているんですが、ちょっと陰謀論っぽすぎるような気もします。しかしこの時点ですでに「88年と同じ道を歩んではならない」という言葉が出てきてはいたんですね。
まあ陰謀はともかく、これまでの経済政策の失敗のツケが回って、政権の台所事情が苦しくなったせいだ、というのはありそうな話ではあります。腐敗した政権が外貨のために天然資源を安値で輸出しており、それが国民にはねかえっている、と。このあたり、ちょっと他の情報源で確認していない話ではありますが。


もうひとつ、関係あるんだろうけどイマイチ頭の中でつながってこない話が外資系の石油関連会社。
France and Total under fire for 'financing' regime - Independent Online Edition > Asia
For Total, pulling out of Myanmar not the answer - International Herald Tribune
フランスの石油会社トタルビルマ最大の外国企業の一つですが、ビルマから撤退することはビルマ社会にとって良くない、という見方を示しています。一方、トタルは軍事政権を利しているという批判も厳しくなっているようです。
タイからアンダマン海にまでつながる天然ガス・パイプラインを建設したヤダナ・プロジェクトには、トタルがかなり出資しています。

このプロジェクトは、ユノカル社(米国)とトタル社(フランス)という多国籍石油企業とが軍政の協力を得て進めたもので、ビルマ側ではカ レンなどの少数民族が住む国の南部にパイプラインが建設されました。この地域の住民の大半は主に農業を生業とする一般人です。建設に関する意思決定への一 般参加はなく、強制労働や強制移住などの人権侵害に加え、建設に伴って起きた森林伐採などの環境破壊の影響も受けました。

軍政は慢性の財政困難にあり、ヤダナ・プロジェクトのような資源開発から得た財源に依存しています。問題は、軍政が得た資金の大半を軍事 力の拡張に使っていることです。1990年から97年には医療・教育費にあてられた額の264%が軍事費にあてられました。ビルマ民主化を支援する団体 などがビルマへの直接投資に反対するのにはこのような背景があります。

というわけで、トタルのような企業が軍政の資金源になっているという批判が出ているわけです。なんか日本の報道ではあまり見かけませんが。


そして AFP のこちらの記事でも、石油関連会社に焦点を当てています。
AFP: Global firms provide lifeline to Myanmar's junta
シェブロンユノカルを買収した)、仏トタル中国石油天然気集団公司が、政権に収入を与えているとされています。
どうも、このあたりのエネルギー・ビジネスと軍事政権との関係が、8月の値上げにどう繋ってるのかがよくわからないんですよね…。あんな馬鹿みたいな値上げをしたら、当然(規模の見積りはともかく)反発が起きるのは予測できたことなんだろうし。トタルシェブロンはこのときの値上げをどう見てたんだろう?それとも、この件はむしろ中国との関係なのか?僧侶が先頭に立ったのは、政権からすれば予想外だったのかもしれませんね。でも今月22日にスー・チーさんが姿を見せることができたのも、どうもデモを鎮める効果を狙ってたんじゃないかって話がありますが、逆にさらに民衆に勇気を与えた結果になったようだし。なんかやる事が裏目にばかり出てるってことなのか。


そして、この AFP の記事では他の国々の会社も挙がっており、その中には新日本石油の名前が見えます。

Nippon Oil said there would be no change in its Myanmar operations following the bloody crackdown on demonstrations, which had steadily grown since August 19 following a massive hike in fuel prices for ordinary people.
普通の人々に対する大幅な燃料価格引き上げに続き、8月19日から拡大を続けるデモに対する血なまぐさい弾圧の後でも、新日本石油ミャンマーでの事業に変更はないだろうと言った。

"We see the political situation and energy business as separate matters," said a company spokesman in Tokyo. He declined to say how much Nippon Oil has invested in Myanmar, formerly known as Burma.
同社の広報担当は「政治的状況とエネルギー事業は別の問題だと考えています」と東京で言った。かつてビルマとして知られたミャンマーにおいて、新日本石油がどれだけ投資したかについては発言を断わった。

ふーむ。新日本石油の話、もうちょっと聞きたいです。日本のマスコミは、ちょっとぐらい新日本石油に話を聞いてみてもいいんじゃないかなぁ。日本の企業なんだし。
中国の天然ガス・パイプラインの計画とかも興味を引くところではありますし、確かにそれも重要なんでしょうが。実際、中国は制裁に反対したし。でもなんかその話ばっか見かけるんで、どうも日本政府の腰が引けてる所が中国批判の影にかくれてしまってないか、という印象があります。五輪ボイコットとかいう話もまた出てきてるっぽいし…。もちろん中国への働きかけも必要ですが、日本自身だってビルマに関してはそれなりに結構責任あると思いますぜ。政治的にも経済的にも。でもなんか他人事っぽいんだよなー、報道が。邦人がたまたま犠牲になったけど、よく知らない人(含む自分)からすると、それ以外はあんま関係なさそうに見えるんじゃないかしら。