盆栽に5億円、それ自体としては安いのかもしれないけど

北沢かえるの働けば自由になる日記 - 「盆栽に5億円は高い」と大騒ぎ から孫引きで。

市によると、購入を予定するのは、盆栽約100点と盆器など約400点。中には1点だけで1億円相当という樹齢450年の逸品もあり、鑑定上の総額は20億円という。5億円は“超お買い得”というのも購入動機だ。高齢で健康面に不安のある高木氏が、コレクションをまとめて購入してくれるならということで、内諾も得ているという。

これが高いのかという話(さいたまとは縁がないので完全に野次馬です)。5億円といっても、まず数が多いんですね。400点で5億円、中には1億相当のものがあるというので、1点1点はそんなすさまじい高額というわけでもなさそうです。鑑定では20億円ということなので、盆栽や器そのものの市場での価格としては相当安いということになりそうです。

ちらっとネットショップで売ってるそこいらの盆栽の値段を見てみると、数千円からあるんですね。やはり、美術品のようにかなり幅があるようです。そんなに良いモノなら盆栽素人の僕にもきっと「存在感」とか「迫力」とかそういうのは伝わってくるんじゃないかなー。直接見てみたい。

国内外からファンやバイヤーが詰めかける「盆栽村」だが、販売用の盆栽はあっても、美術品クラスの盆栽はほとんど所有していないのが実情。

「主要展示物になる」とのことらしいのですが、美術品クラスの展示品が必要なのかどうか、この記事からそこまでは見えてきません。立派なモノがなくても来る人が楽しめるんならそれで良いような気もします。
しかし一方で、「盆栽はこんなに素晴しい」とわかってもらいたいならば、実際に素晴しい盆栽を見てもらうのが一番よい、というのもよくわかります。ただ、それにどれだけのお金をかけるか、という話で。


ところで、盆栽ではなく普通の美術館ではどのくらいの購入予算があるのか気になりました。あまり数字がみつからないのですが、いくつか。

Culture Power - 国立国際美術館
国立国際美術館では、年間1億から2億くらい。「比較的ありますね」らしい。

【変わる国立ミュージアム】(3)財政難余波 知恵で充実-本・アートニュース:イザ!
東京国立博物館が通常4億円くらい。重文の伝雪舟筆の絵が3億だった。
国立西洋美術館が買った3億5700万の絵画は、繰り越し予算があったから買えたということなので、そこから推し量れそうです。

公立なら会計報告があるはずなので、ちゃんと調べればもっと正確にわかると思いますが、まあざっとその程度かな、ということはわかります。ちなみに小さな館では実質的に購入予算ゼロ、というところは結構あるようです。


ところで、さいたま市立の美術館にはうらわ美術館さいたま市漫画会館があります。漫画会館は行ったことありませんが、うらわ美術館は「本をめぐるアート」をテーマにした、とてもユニークで素晴しいコレクションをこつこつと収集している美術館で、僕もたまに出かけます。で、さいたま市平成18年度教育予算を見ると、美術館(たぶんこの二つだと思います)のところが1億7235万円。施設管理とか企画展とかも全部これでやってるんですよね、たぶん。


さて、20億の盆栽を5億で買うという話は、計画中の施設のためのコレクション、つまり初期費用としてですから、上述のような「美術館のランニングコスト」としての年間購入予算と比べるのはちょっと違うのかもしれません。買ってしまえば、世話にはそんなにお金かからないでしょうし(人件費はバカにならないでしょうけど)。
美術品に出すお金、と考えればやはりそれほど高くはないのでしょうが、うーん、必要なのかどうかというところですよね、結局。さいたま市とは関係ない僕としては、それがさいたま市の盆栽村にあっても、栃木県下野市の盆栽美術館にあっても、ちょっと距離が違うだけでそんなに変わりありません(市ヶ谷にあるうちに観に行けばよかった)。あとは、コレクターが高齢でこの先が心配、というのと、海外のコレクターに買われちゃうのでは、という心配があるわけですね…。


寄贈してもらえればそれが一番なんでしょうが、さすがにそうもいかないんでしょう。大枚はたいたコレクションでしょうから。だけど、もしコレクターが「お金にしたい」と考えているのではなく「まとめて面倒見てほしい」ということであるならば、寄託という手もあるんじゃなかろうか。財産としては自分のもののまま、モノ自体は預けるっていう。美術館ではよくありますね。この場合、手元の盆栽美術館よりずっと保管等の条件が良くないと「預けたい」とは思わないでしょうけど。まぁ、手元から離れることには変わりないので、それなら売却のほうがいい、と考えるかもしれませんが…。いやー、寄託もやっぱり無理だったのかな?それともさいたま市が「所有」することが大事だったのか?…その辺が知りたいですね、下衆なワタクシとしては(いやらしい)。

こんな風に考えると、これはやっぱりコレクターとの間の信頼関係という、わりと人間臭い話になるんだろうなーと思います。「あんたの所なら預けてもいい」とか「あんたには安く売ってもいい」というような。その意味では、むしろちゃんと美術館になってるとこ(しかも今年の5月に移転したばかり)のコレクションを安値で売ってもらえるかもしれない、という話になったことのほうが驚きなのかもしれませんね。

海外に流出するのが心配で、本当にそれが日本文化の重要問題なら、文化財指定とかするべきなんでしょうけどね。でも盆栽って、どの分野になるんだろ?美術工芸でもないし、天然記念物じゃないよね?庭園なら建造物のうちなんだろうけど。ていうか盆栽で文化財指定された例ってないっぽい…。でも本当に指定したらちょっと面白いかも。


しかし、こっちの記事にある反対派の「一部議員」のヒト、
http://www.tbs.co.jp/uwasa/20061001/genba.html
「盆栽は野に返してあげたい」ってアンタ、勢いあまって盆栽全否定かよ。