ジンバブエの行方


ジンバブエで先週土曜にあった選挙の最終的な結果がまだ出ていません。いくらなんでも遅すぎる。きっと現地でも苛立ちがつのっていることでしょう。


総選挙で与党 Zanu-PF の議席がどうなるかももちろんですが、何といっても28年間の長きにわたって大統領の座につきつづけてきたロバート・ムガベが、今回の選挙で政権から離れるのかどうかが最も注目されるところです。ジンバブエの選挙を巡っては、対立候補が脅迫を受けたりもして、選挙結果もムガベ側に有利なように不正が行なわれるのではないかという疑いが濃厚とされています。ていうか、たぶん不正はあるよね、と皆思ってるみたい。


とか書いてる内に、与党が破れたというニュースが。おおお。
BBC NEWS | Africa | Mugabe's Zanu-PF loses majority
大統領選は、大統領選はまだなのか?いや、選挙以降の報道では、対立候補ツァンギライ側が得票数で上まわっているという調査があるが、おそらく決戦投票(50%以上を獲得した候補がいなかっ場合は決戦投票)に持ちこまれるだろうという論調が多かったのですが。もしかすると決戦投票なしでムガベが大統領を降りるのかもしれません。これは目が離せない。


なぜ目が離せないか。国内がもうムチャクチャだからです。どれくらいメチャクチャかっていうと、インフレ率10万パーセント、失業率80%、燃料や水や食料がひどく不足していて、ほとんど完全に経済が崩壊している状態なのです。ムガベ政権の失策がここまでの事態を招いた重大な原因と言われています。それほどひどい状態にある国で、選挙で不正が行なわれたら…誰もが今年始めのケニアの暴動を思い出すことと思います。ただ、民族間の対立はあまり報じられていないようなので、すぐにそのままケニアのようなひどい暴力の応酬に発展するということはないかもしれませんが。


その上、これまでの与党の失政のせいで経済制裁が課せられているのです。これが責任のある与党の政治家や政府高官にとってよりも、一般の国民にとって打撃となっているようなのです。ジンバブエToday! というブログの、ちょうど一年前のエントリから。

知人から噂話を聞いたり、新聞を読んだりしていると、ジンバブエ与党高官は、ジンバブエ状況が悪化した2000年ごろから、ますます金持ちになっているようなのである。一般大衆は、ますます貧しくなっているのにも関わらず、である。一般的に、このように混乱し低迷した経済状況では、「普通の企業」経営をしたりお勤めをしても儲からないし、支払いも少ない。外貨が無い、原料が足りないから輸入できない、輸出できない、取引できないというケースはたくさんある。これを可能にするのが、政府との強力なコネである。外貨をコネで中央銀行からまわしてもらう、原料をまわしてもらう、燃料を激安で仕入れさせてもらう。燃料や外貨については、現在では、市場価格の100分の1ほどの値段で、コネがあればまわしてもらえるのである。政府高官ならこれができる。高官自身がビジネスマンの場合、本人が金儲けをするし、彼/彼女にビジネス能力がなくても、ビジネスができる親戚・知人にまわしてやれば、一族・本人が儲かるのである。おかげで彼らは先進国の金持ちと同じくらいか、それよりも良い生活をすることが出来る。一方で、ハイパーインフレに苦しむ一般住民は栄養が足りず、エイズ患者が多いジンバブエでは、体力の無い者からバタバタ死んでいく。


そう、エイズ患者も多いのです。国境なき医師団の去年7月の記事。

(…)女性の平均寿命は、1990年の62歳から現在では34才にまで短縮している。国民の80%が失業しているとみられ、子どもの4分の1が孤児である。

しかしこのような数字の中でも、とりわけ驚くべきものはHIV/エイズに関する統計である。人口1200万人のこの国で、成人の5人に1人がHIVに感染している。HIV関連の病気で毎週3200人が死亡し、推定60万人が抗レトロウイルス(ARV)薬による延命治療を必要としている。


たとえ資金援助が行なわれても、あまりのインフレ率のせいであっという間に目減りしてしまう。さらに、昨年は凶作。

HIV/エイズ治療の成功には、良好な栄養状態が不可欠である。しかし2007年初頭に、ジンバブエの多くの地域では雨期が短かったため、食糧不足と栄養失調の懸念が高まっている。今年は凶作が予測されており、ある地域の農業従事者は、必要とされる穀物11万5千トンに対し、収穫量は5580トンと見積もっている。食糧が手に入る地域であっても、一部の人びとは貧しくて買うことができない。


大規模な紛争が無いということを除けば、考えうるかぎりの酷い状況と言えるんじゃないかと思います。この国はいったい、立ち直れるのか。その希望が、今回の選挙にかかっているのです。


もちろん政権が交代したところで、それだけで何もかもが解決するわけではないでしょう。しかしこの国にわずかでも希望が見えること、それがまずは重要です。状況が好転する見込みがあり、政府による不正を抑えることができるのなら、外国からの援助はずっと受けやすくなるに違いありません。


大統領選の集計もかなり遅れていますが、まもなく結果が出ることでしょう。