ハイペースでの処刑を常態化してはいけない
法務省の言いなりになって、鳩山法相がまた死刑執行を命令しました。法務大臣はまるで「執行数を増やすのが大事」と考える官僚たちを代表しているみたいです。
法務省は10日、同日午前に4人の死刑を執行したと発表した。鳩山法相が昨年8月に就任以来、執行は昨年12月の3人、今年2月の3人に続いて3回目で計10人。法相は午前11時からの記者会見で「これからも、粛々とやらせていただく」と語った。これで確定死刑囚は104人になる。
一時止まっていた執行が93年に3年4カ月ぶりに再開されてから、1人の法相のもとでの10人の執行は長勢前法相と並んで最多。前法相は4カ月に1度だったが、鳩山氏は2カ月に1度の間隔で執行命令を出していることになる。
毎回あがる批判をものともせず、あくまで法務省主導のペースに唯唯諾諾と従う大臣のおかげで、任期中に「残り100人」を切るかもしれませんね。そういう報道があるわけじゃありませんが、法務省ではきっと「鳩山大臣の任期中なら、100人以下を実現できる」とか考えるんじゃないでしょうかね。僕にはどうも、数字合わせのためだけにこんな異様なハイペースが続いているように思えます。
ま、ご本人は数は気にしてないんだそうですが。
鳩山法相が命令した死刑執行は計十人。一九九三年の死刑再開後、長勢甚遠前法相と並ぶ最多の人数となったが、「法の要請に基づいて粛々と任務を執行した。法務大臣の責任を果たしているつもりだ。数を意識したことはない」と述べた。
一方、各死刑囚が再審請求や恩赦出願しているかどうかについては「確定死刑囚や被害者遺族の心情の安定を損ねる」などとして答えなかった。
氏名を公表するようになったことは、確かに以前の完全秘密主義からすれば、ほんのわずかではあれ前進だと思いますし、その限りでは評価できるとは言えます。しかし、重要な情報の開示は不十分と言わざるを得ません。アムネスティによれば、
中元さんは無罪を主張しており、過去に再審請求もしていました。中村さんは精神障害の疑いが指摘されていました。坂本さんは一審判決が無期懲役で二審で逆転死刑判決を受け、上告せずに確定しました。秋永さんは一審判決が無期懲役で二審で逆転死刑判決を受けました。秋永さんの弁護士は恩赦請求の準備中であり、しかも請求直前であったという情報もあります。
とのことです。
ところで、前回の執行はいつだったか覚えてますか?2月1日です。その前は昨年12月7日。2ヶ月おきの執行が続いています。覚えてらっしゃる方もいると思いますが、昨年の4月に執行されたときには、その前の執行から「わずか4ヶ月しかたっていない」という批判があったのですが、それが1年後には2ヶ月に縮まっています。非常にペースが上がっています。その一方で、昨年は国連加盟国に死刑廃止を念頭に置いた死刑執行停止を求める決議が採択されています。死刑は決して「当たり前」の選択肢ではありません。こうしたハイペース化によって世間の感覚が麻痺してしまうことが心配です。
以下に、これまで死刑について書いたエントリをあげておきます。
死刑が「当たり前」じゃないってことは、もっと考えられていい
抑止効果という神話
死刑廃止論の補足