子どもの自殺

中学生がいじめを苦に自殺した事件に関連した東京新聞の記事(紙のほうです)に、文科省の統計が出ていて、いじめの件数、小中学生の自殺者数が出ていました。記事では「毎年これだけの数のいじめがあり、自殺者もいるのに、いじめが原因の自殺が何年にもわたって0件というのは、報告の内容がおかしいのでは?」という趣旨のもの。そういうことはいかにもありそうだなぁ、数値目標の設定が事実を隠蔽することになるようじゃ困るよなー。

とも思いましたが、実を言うと数字を見たときには「え、子どもの自殺ってこんなに少ないの?」というのが第一印象でした。で、文科省の統計を見ました。


生徒指導上の諸問題の現状について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092704.htm
その詳細の PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092704/all.pdf

PDF の p.47 に「(6-1)児童生徒の自殺の状況」が出ています。

平成16年では、小学生4、中学生30、高校生91で計125件。ほとんどが高校生なんですね。昭和54年には3倍以上の380件もあったのか。全体としては徐々に減少してる模様。で、その次のページに自殺の原因別状況が出てます。15、16年度もやはり「いじめ」は0件、他に0件というと「貧困」などがありますね。それにしても「その他」が非常に多い。あと「不明」が項目として無いのがちょっと気になります。


さて、第一印象として「子どもってあんまり自殺しないんだなぁ。まあ考えてみりゃ、そうかもな」と思ったのですが、もちろん絶対数だけでは割合がわからないので、同じく文科省平成16年度の統計から、それぞれの10万人あたりの自殺者数をおおまかな数字で見ると(ついでに日本人全体の自殺者もつけると)、

小学生 中学生 高校生 日本人全体
自殺者数 4 30 91 3万人
児童生徒数 720万 366万 372万 1億2千万
10万人あたり 0.056 0.8 2.4 25

こんな感じ*1。やっぱり子どもの自殺ってすごく少ないんですね(もしかして常識?)。高校生が多いといっても日本人全体からすれば10分の1くらいです。別の資料を見ても、日本ではおじさん達の自殺が一番多いんですよね。だけど子どもの不幸というのは、大人の不幸と比べてどうしても気になるというのはあるでしょう。僕もそうですし。


ところで自殺率の国際比較を見てみると、国によってものすごく差が大きいのがわかります。子どもの自殺率は国際的に見てどうなんだろう、と探してみましたが、なかなかありません…(UNICEF あたりにあるかなと思ったんですが…)。
ただ、WHO の2000年の統計で、年齢・性別ごとのグラフがありました。5〜14歳で男子1.5、女子0.4。やっぱり世界的にも子どもはあんまり自殺しないのかー。まあ、国による差がかなりありそうな感じなので、これではおおまかすぎると思いますが、日本の子どもの自殺率は世界全体からそんな極端に外れてるわけじゃないのはわかります。


子どもの自殺のうちでも、いじめを原因とするものが特に大きく報じられるのってなんでだろうな(学業不審とか進路問題とか父母の叱責とか精神障害とか厭世が原因とされるケースは0じゃなくて数字が挙がってますが、そっちは気にならないのかな…)、やっぱりいじめってのは陰湿で他の原因に比べて特に許せないってことなのかな?…と、ちょっと思いました。あと他の国ではどんな原因が多いんだろう、とか気になります。
あ、あの、もちろん子どもの自殺は可能な限り(現実的な対策で)なんとか未然に防いでほしいと思ってます。念のため。

*1:単純な計算間違いがあったので一部訂正