四次元ポケット/未来に向かって落っこちる

 四次元ポケットってあるじゃないですか。なんか「とにかく広い」みたいなイメージしかなかったんですけど、考えてみると広けりゃ便利ってこともないんじゃないかって気がしてきたんですよね。あのポケットの内側には広大な空間がひろがってるんでしょうけど、それがまあ4次元的に広がってるんですよね?だから単に広いんじゃなくて4次元方向にスタックできるってことだと思うんです。

 3次元方向にものを「積む」ことから類推すると、2次元空間の住人が3次元空間を使えるみたいな感じなんだろうと思います。2次元人が普通にものを収納しようとしたら平たく「並べる」ことしかできないけど、彼らが「三次元ポケット」を使えたら、まあ縦っていうか垂直方向にものを「積む」ことができる。うん、これはとても画期的な感じがします。

 

 例の彼がポケットに潜り込むみたいに、2次元人が「三次元ポケット」に潜り込むとどんな感じでしょうか。2次元の世界になんか裂け目があって、そこに潜り込むんでしょうかね。すると裂け目の反対側、つまり3次元の私達からみると、その裂け目からいきなり立体物がにょきにょき姿を現すように見えるんでしょうか。貞子みたいに。(ところで「裂け目」ってなんか哲学っぽいですね)

 出てきた(潜り込んだ)人は、そうして3次元世界にものを置いたり、そこから探し出したりするわけですよね。まあ2次元から見れば限りなく無限みたいに感じられるでしょうが、私達3次元の住民は、いつも場所が足りないと不満を漏らしています。2次元人に「いや、そんな言うほど広くないから」って言いたくなります。「上に積めるったって、そんなに高く積んだら取りづらいし、崩れたとき危ないよ」って。そう、3次元方向には重力の壁があるのでした。

 

 だからたぶん、四次元ポケットの中だって、なにか4次元的な重力みたいな制約があってもおかしくないなぁ、と。4次元方向に「積む」っていっても、いくらでもというわけにはいかないんじゃないかな。足元というかなんというか、そっちに引っ張られたりするのでは?

 

 そういえばよく、時間のことを4つめの次元として捉えたりしますよね。もしそうなら、私達が引っ張られる方向って未来ってことになりますよね。そうか、未来に向かって「落っこちてる」のかもしれませんね。

 時間の流れって、いままさに「流れ」と書きましたが、「流れるもの」っていうイメージですよね。つまり川です。「ああ 川の流れのように」みたいな。「ああ 時の河を渡る船に オールはない 流されてく」みたいな。「ああ」とセットなのかなもしかして。ともかく、川の流れも重力によるものだけれど、水平方向の移動ですね。

 

 そういえば、ヴァルター・ベンヤミンがクレーの天使の絵について書いた美しい文章があります。その天使は過去の方を見つめたまま、楽園から吹きつける嵐に吹き飛ばされて、破壊され瓦礫が積み上がってゆくばかりの過去にとどまることができません。そしてその嵐が「進歩」なのだと。

 

 川でも嵐でもいいですが、落っこちる、ていうのもなかなか悪くないイメージだと思いません?なんかSFにありそう。未来に向かって落っこちる話。なすすべもなく落っこちていく我々3次元の住人に対して、多少なりともそれに抗う能力のある4次元人がかかわってくるみたいな。なんかホントに誰か書いてそうだな。あるなら読みたい。(SF小説苦手だけど)

 

 なんの話だっけ?ああ四次元ポケット。ポケットに潜り込んだとき、その入り口が四次元的な「下」というか「地面」みたいな場所にあればいいけど、「上」にあったら落っこちてそのまま出てこれなくなりそう。もしかしてそういう設定もあるのかな?よく知らない。ともかく、四次元ポケットに入るときは気をつけましょう。